
抵当権抹消の登記原因証明情報兼登記承諾書を
「支配人」が作成しています。
この書類でも大丈夫ですか?



支配人が登記原因証明情報兼登記承諾書を作成しても、書類の適確性に問題はありません。
(事例)
甲土地について、くまのみ市へ所有権移転登記後に、甲土地に設定されている抵当権を抹消する
抵当権が消滅したことを証する登記原因証明情報兼登記承諾書には、金融機関等の住所、名称及び代表取締役(代表理事)の氏名が記載され、押印があるのが一般的である。
では、登記原因証明情報兼登記承諾書に支配人の氏名、押印がされていた場合、どうでしょうか?少し迷いませんか?
嘱託登記の添付書類として使用しても大丈夫なの?
登記原因証明情報兼登記承諾書


(抵当権者) 住所 ○○市○○町二丁目12番地
(乙) 株式会社○○銀行
支配人 ○○○○ 印
支配人が登記原因証明情報兼登記承諾書を作成しても、書類の適確性に問題はありません。
[理由]
支配人は会社に代わってその事業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する(会社法11Ⅰ)
支配人は、代表取締役と同様に法務局に印鑑を提出できます(商業登記規則9Ⅰ③)
嘱託書の義務者は、どのように記載すればいいの?
代表取締役
「登記研究427解説3」には、次の記載があります。
「抵当権の抹消登記申請は、株式会社である銀行の代表者から申請されるもの」
したがって、登記原因証明情報を支配人が作成した場合でも、申請人は代表取締役を記載します。
登記嘱託書


義 務 者 ○○市○○町二丁目12番地
株式会社○○銀行
(会社法人等番号 1234-56-789012)
代表取締役 ○○○○
支配人
ちなみに、下記のように支配人と記載したこともありますが、補正とはなりませんでした。
登記嘱託書


義 務 者 ○○市○○町二丁目12番地
株式会社○○銀行
(会社法人等番号 1234-56-789012)
支配人 ○○○○
登記研究688
支配人登記がされていない支店長等が登記原因証明情報の作成名義人となることの可否について
[要旨]
登記原因証明情報の作成名義人となる法人の代表者に代わるべき者には、支配人登記がされていない支店長等も含まれる。
問
法人が登記義務者となって権利に関する登記を申請する場合の登記原因証明情報の作成名義人は、法人の代表者又はこれに代わるべき者であると考えますが、法人内部で実質的に申請に係る不動産の取引を行う権限があり、その権限があることを証する情報(社内規定や業務権限証明書等)を併せて登記所に提供した場合には、支配人登記がなされていない支店長等であっても、代表者に代わるべき者として登記原因証明情報の作成名義人となることができると考えますが、いかがでしょうか。
答
ご意見のとおりと考えます。
登記研究427
支配人の登記のない銀行支店長作成の原因証書を添付した抵当権抹消登記の受否について
(昭和58年3月7日付け登第257号福島地方法務局照会、同月24日付け法務省民三第2、205号民事局第三課長回答)
[要旨]
支配人登記のされていない銀行支店長が作成した弁済証書又は解除証書を登記原因を証する書面として、銀行代表者から抵当権抹消登記申請があった場合には、受理して差し支えない。
(照会)
支配人登記のされていない銀行支店長が作成した弁済証書又は解除証書を登記原因を証する書面として、銀行代表者から抵当権抹消登記申請があった場合には、受理して差し支えないものと考えますが、いささか疑義がありますので何分のご指導を願います。
(回答)
本年3月7日付け登第257号をもって照会のあった標記の件については、貴見のとおり取り扱って差し支えないものと考えます。
[解説]
1 本件照会の趣旨は、銀行の支店長名義で作成された弁済証書又は解除証書が抵当権抹消登記の際の登記原因を証する書面としての適格を有するか否かを問うものである。「支店長」という肩書は、銀行の組織の内部的な呼称であって、「支配人」のようにその代理権限が法律上明定されているものとは異なるところから、支店長名義で作成された弁済証書等が登記原因証書として適当か否かに疑問をもたれたものと思われる。
2 登記原因を証する書面は、申請に係る権利変動の成立を文書という手段で証明せしめ、これを登記申請書に添付させることによって、登記官に形式的に証明に係る法律事実の存在の判断を可能にするものである。作成権限のない者が作成した文書は登記原因を証する書面としての適格性はないとされるが、代理人が作成した文書が登記原因を証する書面である場合でも、さらに代理権限を証する書面を添付することを要しないと解されている。
3 そこで、銀行の「支店長」が弁済証書又は解除証書を作成する権限を有するか否かであるが、銀行の支店はその組織上独立の営業活動を行う単位として、その支店ごとに営業活動を決定し、対外的な取引を行う社会的な実体を有すると解され、したがって、その支店に置かれている「支店長」は、それが、「支配人」の登記がされている場合はもちろん、そうでなくても、支店において行われる営業活動の範囲内で弁済を受領し、又は合意解除を行う等の権限を有すると解することができる。また、抵当権の抹消登記申請は、株式会社である銀行の代表者から申請されるものであり、その申請において「支店長」作成の弁済(又は解除)証書が添付されているのであるから、その証書に係る法律事実も、銀行そのものに対して有効に生じていると解するのが相当であろう。登記した「支配人」がその名義で作成した弁済証書又は解除証書でなければ登記原因と証する書面に該当しないと解する必要はないと考えられる。 以上の趣旨により本件回答がされたものであろう。
コメント