昭和23年1月1日 新民法施行
9ヵ年間のズレ
昭和32年1月1日 沖縄県において、新民法施⾏

「戦後沖縄における法体系の整備ー登記簿・戸籍簿を含めてー」(久貝良順 沖大法学) P105〜P106において、興味深い事例設定がなされています。
その後の判例等により修正されていることもあるようなので、そんなこともあるのねー、程度にお読みください。



”このズレのあった9年間に人が死んだというような場合5人の子どもがいて1億円の遺産があったとします。沖縄で死んでくれれば家督相続で1億円もらえる。東京で死んでくれると、共同相続で2千万円しかもらえない。1億円と2千万円の違いを大変なものである。”
その9ヵ年の間に相続が開始した場合、新民法によるのか、沖縄の法律(旧民法)によるのか。
第1 | 本籍 | 住所 |
被相続人 | 沖縄 | 沖縄 |
相続人 | 沖縄or東京 | |
不動産の所在 | 沖縄 | |
適用される法律 → 沖縄の法律 |
第2 | 本籍 | 住所 |
被相続人 | 沖縄 | 沖縄 |
相続人 | 不問 | |
不動産の所在 | 本土(鹿児島)、不問 | |
適用される法律 → 沖縄の法律 |
第3 | 本籍 | 住所 |
被相続人 | 沖縄 | 本土 |
相続人 | 東京その他 | |
不動産の所在 | 沖縄 | |
適用される法律 → 本土の法律 |
第4 | 本籍 | 住所 |
被相続人 | 沖縄 | 本土 |
相続人 | ||
不動産の所在 | 沖縄 | |
適用される法律 → 本土の法律 |
「戦後沖縄における法体系の整備ー登記簿・戸籍簿を含めてー」
(久貝良順 沖大法学) P105〜P106
(七) 規定の本土法令との同一化
これは非常に大事なことではございますが、われわれが法律をつくる場合は日本で既にできているような法律の内容と同じような規定をした内容の法律を作ろうということです。例えば、日本で新民法ができました。その新民法ができておりますので、われわれが作る新民法も日本の新民法と同じような規定の内容のものにする。これがいつかは沖縄が日本に復帰する場合は沖縄の法律が直ちに日本の法律に移行できるような、われわれの復帰運動をスムーズに進めるための基盤作りにもなるのだということからでありました。
沖縄で新民法が施行されたのは、昭和32年1月1日、本土で新民法が施行されたのが昭和23年1月1日、その間に9ヶ月間のズレがありました。そのズレた9ヵ年間に日本では共同相続、沖縄では家督相続、そういう場合にはどうなるのかという法令上の難しい問題がたくさんありました。それもいちいち整理しながら今日を迎えているわけです。
この相続法のズレの問題は非常に難しい問題で、そして多くの方の関心のある問題であります。このズレのあった9年間に人が死んだというような場合5人子どもがいて1億円の遺産があったとします。沖縄で死んでくれれば家督相続で1億円もらえる。東京で死んでくれると、共同相続で2千万円しかもらえない。1億円と2千万円の違いは大変なものである。これを解決する基準の第1は、被相続人が沖縄に本籍があり、沖縄に居住しており、不動産が沖縄にあった場合は相続人が沖縄に居住しておろうが、東京に居住しておろうが、沖縄の法律に基づく家督相続が開始します。
第2は、被相続人の本籍が沖縄で、住所が沖縄で、不動産が本土、例えば鹿児島にあったとする。そういう場合は被相続人に住所が沖縄であれば相続人の住所、それから不動産が本土にあるということにかかわりなく、家督相続が開始します。住所地がどこであるかということが基準になるわけです。
3番目に被相続人の本籍が沖縄にあり、被相続人の住所が本土に、被相続人の不動産が沖縄にある場合。相続人が東京またはその他に居住している場合は共同相続が開始いたします。住所地がどこにあるかということによって決まります。
4番目に被相続人の本籍が沖縄にあり、住所が本土にあり、不動産が沖縄にある。そういうような場合には、住所が本土にありますから共同相続が開始されます。ですから、どこの法律に従うのか、共同相続なのか、家督相続なのかは、死んだ人の住所がどこにあるかということによって決まるので、不動産が沖縄にあるのか、本土のあるのか、相続する人が日本にいるのか、沖縄にいるのかではない。死んでいく人の相続の場所で決まるということになるわけであります。
民法改正の経緯は https://www.moj.go.jp/content/001143587.pdf
沖縄には認定戸籍というのがありますが、その認定作業をしていたのが、上記の久貝さんではないでしょうか?認定戸籍の戸籍認定員の印に久貝という押印がありますよ!認定戸籍を取得した際に、確認してみては?
コメント