MENU

上司に「嘱託の順番が時系列になってないぞ!やり直せ!」と言われ、「いやいや、それはですね・・・」と言いたいあなたへ(嘱託の順序[2] 〜名変登記〜)

甲土地

①2024年5月1日A(登記記録上の住所:1番地)がくまのみ市に甲土地を売る

②2024年5月15日Aが承諾書に添付する印鑑証明書(住所:2番地)を持参
(Aは本日、引っ越しをして、役所で住所移転の手続きを済ませ、新住所記載の印鑑証明書を持参した)

③2024年5月20日登記嘱託

(イ)時系列に並べると

1件目 所有権移転登記  2件目 名変登記

(ロ)登記官の視点

仮に、時系列に沿って嘱託するとした場合、登記官からはどう見えるのでしょうか?

1件目

  登記嘱託書

 登記の目的 所有権移転

 原因 令和6年5月1日売買

 権利者 くまのみ市

 義務者 2番地 A※1

 添付書類 登記原因証明情報兼登記承諾書(印鑑証明書付)※2

※1Aの現住所は「2番地」なので、現住所を書きます。

※2Aの印鑑証明書記載の住所は「2番地」

Aは、「私は、甲土地の所有者Aです。くまのみ市に甲土地を売ったので、所有権を移転してください。」と登記官に伝える必要がありますが、登記記録上のAの住所は「1番地」です。登記官からすると、「登記記録上のAの住所は1番地です。嘱託書に記載されているあなたは2番地のAであり、別人ですよね?」となります。したがって、登記の順序を再考する必要があります。

私は、甲土地の所有者Aです。くまのみ市に甲土地を売ったので、所有権を移転してください。

登記官

登記記録上のAの住所は1番地です。嘱託書に記載されているあなたは2番地のAであり、別人ですよね?

(ハ)順序の再考

登記官に「別人ですよね?」と言われないためには、まず、「私の現住所は1番地から2番地へ変わりました」という名変登記を先にする必要があります。つまり、登記記録が「2番地A」に変われば、登記官は「登記記録上のAと嘱託書のAは同一人物ですね」となるので、1件目で名変登記をすることになります。

1件目 名変登記  2件目 所有権移転登記

ちなみに、1件目で名変登記をしなければ
登記記録:1番地A
嘱託書の記載:2番地A
となり、登記義務者の氏名及び住所が登記記録と合致しない場合として却下されます(法25⑦)

時系列に沿って登記する必要がないのはなぜ?

住所移転は、名変登記の原因となるが、権利変動(例えば、所有権が移転する)による登記ではないため、権利変動の過程を忠実に登記するという要請は働きません。

不動産登記(権利に関する登記)の機能:不動産ごとに、「権利関係の現状」の情報及び「権利変動の過程」の情報を公示すること。民法177・法59③

次回の記事では、「登記官の視点」を「登記義務者の定義」と絡めて考えてみたいと思います。

よかったらシェアしてね!

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次